読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

戦火の馬

http://disney-studio.jp/movies/warhorse/

何でそんなに夢中になるのかわからないよ。
たかが四本脚で、頭としっぽがあって、体を動かす脳みそはうんと小さくて、
食べることと水を飲むことしか考えられない動物だろ

昔学校の近くにラーメン専科という、学生向けのラーメン屋があって行きつけだった。
戦火の馬というタイトルを聞くと必ずそのことを思い出す。


これは動物映画なのだろうか? という迷いがあった。
予告編を見た時から、本能は、これは間違いなく動物映画だと告げていたが、
僕の理性は、動物映画のようなプロモーションをしておきながら、
実はヒューマンドラマの映画なのではないかという不安がぬぐいされなかった。
だから、知り合いには
「動物映画なんでどうせ2/3は馬しか出て来ません」とか
「たぶん戦場で競馬するところが見所」とか軽口を叩いていたけど、
ほんとは公開されるまでずっとドキドキしてた。
アカデミー賞にもノミネートされてたのも、ドキドキ感を煽ってくれました。


……まあ結果的には、ほんとにただの動物映画でした。
いや、ただならぬ動物映画か。

ある日、イギリスの農村の子アルバートのもとに、サラブレッドがやってくる。
それは、農耕馬を買いにいった父親が血迷って買ってきたものだった。
アルバートは彼をジョーイと名付け、農耕馬としての訓練をするも、
唐突にはじまった戦争にジョーイは軍馬として参戦する事になる。
ジョーイは戦地を転々とするさなか、様々な国や立場の人間と出会うが、
彼と出会ったどの人間も、ジョーイの圧倒的な存在感に惹かれ、
彼を幸運へと導くのだった。
そしてついに、激化する戦争に、アルバートが赴くことになるー

みたいなお話。
まあこんなブログをわざわざ探し当てる訓練された動物映画ファンの皆様なら
このあらすじを見ただけで瞬時にやべーなと思っていただけるとは思うけど
お察しの通りアルバートは最初と最後しか出ません。
あとはわかるな。


前も同じ話しした気がするけど、やっぱりイギリス出身の動物って
どいつもこいつもどっかおかしくて、この軍馬ジョーイも間違いなくその一人だ。
その圧倒的なカリスマと、農耕で鍛えられた脚力と生命力は、
どんな悪条件の戦場にも、どんな強敵(たとえ相手が兵器であっても)にも怯むことはない、
みたいなカリスマ性を、スピルバーグはその手腕で見事に描き出す。
一方で、戦場の激しさを伝えるシーンの臨場感もすばらしく、
どこまでいっても死の匂いがする世界を、スーパークリーチャーがのうのうと生きるみたいな、
動物映画的倒錯感を高い次元で表現し続けていて、
特に後半は、楽しすぎておかしな笑いが出まくりだった。


それ以外にも全体的に動物映画ファンのツボを抑えた作りになっていて、
たとえばライバルのトップソーンが何気なく画面に写っていて、
名前が出てきた瞬間に舐め回すようにカメラが捉える、
みたいなところとかで例によって僕は笑ってしまったんだけど、
この辺は、動物を物語るという事の帰結なのか、巨匠の魔力なのか、
どっちかよくわからなくなる感じが終始あって、これもまたとても楽しかった。


著名人が手がけた映画の大作、アカデミー賞ノミネートってことで、
多くの人々が鑑賞して、みな口々に感想を述べているのは、
動物映画としてはあまりないことなので嬉しく眺めさせてもらったけど、
どうも欠点として
「どの国の人物も英語でしゃべるのでがっかりする」
っていうのがよく上がってたような気がする。
僕はちゃんとした映画をあまり見てないので、
これについては特に何も思わなかった。
ジョーイにとっては、どの人間の言葉も同じだと思うし。


1800円で見る価値があるかどうかについては、
動物と戦争っていうテーマの映画への敬意で1800円。
あと、スティーヴン・スピルバーグの動物映画(アレだよアレ)が好きなので+500円。
戦火の馬っていうタイトルが頑張ってるとおもうので+100円。
ジョーイの演技がとにかく素晴らしいので+500円。
個人的に戦車のマークIが大好きで、満足したので+100円で
3000円としておこう。
でも、特に中盤以降はあまりにまっとうな動物映画としてオモシロすぎたせいで
誘って一緒に見に行った人に、いつ「騙したな」と殴られてもおかしくないと
わりと本気で思ったので-300円の
2700円としておこう。


あ、それと原作を読んだんですが、
動物映画のファンは是非手にとって欲しいなあと切に思う。
小説→映画にするにあたって、『動物を物語るということ』を考えた上で
再構成している、ということが信じられるからです。
同じ話なんだけど、どこか違った空気感の物語になっている。
この、一つの物語が、2重に(舞台もあるようなので、ホントは3重だろう)
『物語られている』という事を感じることができること、
それ自体、僕が考える動物映画のもっとも素晴らしい体験だし、
その意味でも、この戦火の馬は素晴らしい動物映画だったといえます。
という意味で、+400円の
3100円としておこう。