動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

テッド2

ted-movie.jp

テッドは動物映画なのか?

みんな大好きテッドの続編。

テッドは動物映画なのか? みたいな話はあると思いますが、 

自分でもちょっと疑っていたところがあって、それで前作は見るのが遅れてしまったんだけど、最初の数分のオリジンが語られるところを見て、ああ、やっぱり動物の姿をしたものと人間が交流する映画は動物映画だよなあと。

そんなわけで2も見たんですが、前述の疑問はしっかりテッド2全体のテーマとして語られていたので驚きました。

「テッドとはどんな存在なのか?」がテーマの映画です。

 

テッド2のあらすじ

結婚して新婚ホヤホヤのテッドだが、互いに独身の延長線上の夫婦生活はあまり順調とはいかなかった。

満を持して子供を作ろうと模索するが、それもあたわず、テッドは養子を迎えることを決意する。

だが、審査は冷酷にもテッドが養子を取る資格がないこと……すなわち、人間ではないことを看破してしまい、テッドはアメリカ国民の権利を次々と剥奪されていく。

テッドは妻と旧友の協力を得て、裁判により公民権を獲得しようと画策する。

っていう話。

…しかし、ストーリーを解説すると逆に面白さが伝わらない希有な作品じゃのう。

 

人間と動物の境目

動物の話に限らずだけど、ファンタジー作品は、「なぜそうなっているのか」という聞き手の疑問なくしては成り立たない。

「丁寧に説明する」にせよ、「あえて答えない」にせよ、聞き手の顔をみながら、その疑問に対して何らかのリアクションをしなければならないのである。

人間世界に住む動物たちの物語は、たいてい冒頭で「なぜ、彼らは人間の世界で暮らしていけるのか」が語られる。

前作のテッドの冒頭、テッドが心を持つようになる一連の語りだってそうだ。

こないだみた、パディントンだってそうだ。

パディントンがどうやって人間の言葉を覚えたか、みんな知っているでしょう)

人間が、神話時代からずっと受け継いできた、世界に対する「興味そのもの」といっていい。

余談になるけど、近年、この「聞き手の疑問」とうまくつきあえないファンタジー作品が多いと感じている。

「ファンタジーだから、細かいところはどうでもいいじゃないか」という言い方をよく目にするし、語りに疑問を差し挟むことを「野暮」とたしなめる人を良く見る。

物語への疑問を許さない風潮なんて、物語の力をあまりにも見くびりすぎていると思うけど、どうでしょうか。

 

……「脱線したけれど、前作のテッドは、この聞き手の疑問点をはっきり認識しながらもあえて「答えない」方法でリアリティを表現していった。

そして、今回、テッド2は、その疑問……「なぜ、テッドは人間の世界で暮らしていけるのか?」に再び目を向けて、観客を巻き込んでいくのだ。

テッドがただのインモラルコメディ映画ではなく、ファンタジー作品としての矜持を持っていると思うのは、そういうところにある。

 

そして、この、「何をもって人間とするのか」を、裁判で決めようというのが実によくて、これはファンタジーでも何でもなくて、「公民権をもつ」ということが裁判で争われてきたアメリカでは当然の認識なんだろうなあと思います。

実は、この映画を見る前に「ビハインド・ザ・コーヴ」という動物映画を見たんですが、そこでも全く同じ議論(イルカは公民権を持てるか?)がなされていたという、意味のある偶然もあって、とても面白く感じました。

1960年ごろから過激に論じられてきた、「動物は権利を持つか?」というのは、日本人だと???みたいになりがちだけど、アメリカでは「当たり前の発想」なんだなあと、興味深く思うと同時に、苦しいなあと感じました。

 

とはいってもテッドはテッド

テッドが優れたファンタジー作品である、と大げさにいってみても、結局話の中心になるのはセックスとドラッグと21世紀のアメリカンカルチャーなのである。

(話の中心、というのは文字通り、ストーリーに直接的に絡んでくるという意味だ) 

 前作とちょっと違うのは、21世紀のカルチャーの描写で、今回はオタクの描写が多い―ー具体的にはコミコンが舞台になる。

コミコンがなんであるかというのは、まあマイリトルポニーを愛してやまない動物映画クラスタの諸兄ならご存知と思いますが、アメリカ最大のオタクのコンベンションだ。

そのオタクたちを巻き込んでのドタバタ劇が、今回のおもしろポイントの一つだ。

特に、マイリトルポニーのピンキーパイフィギュアで殴るシーンは普通に爆笑した。

でも、この場面かなり気になったところが、全体的にオタクを攻撃する絵面で笑いにしようとする意図がちょっと見え見えだったこと。

アメリカの例のヒエラルキーからいえば、そうなるのかもしれないというリアリティは理解できるけれど、ちょっと一億総オタク民族の日本人には苦しい内容だったかと思います。

ついでに、それを助長していた点として、ドラッグについては説教臭くならない絶妙なバランスで、その危険性みたいなことを強調していたのだけれど、オタクの扱いについては特にフォローもなかったというギャップもあったのも、ちょっともやもやポイントだったかなあと。

 

スコア

テッド2を劇場で見る価値があるかについては、

まず良質のファンタジー映画なので1800円。

マイリトルポニーがやたらうつるので+200円。

動物愛護問題のリアリティを感じることができたので+200円。

ドラッグが楽しそうに描かれていたので+100円の、

2300円としておこう。

 

やっぱり、動物の権利の問題を考えるときには、これは見ておいた方がいいと思います。

道徳的な作品ですねww