動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

マダガスカル3

http://www.madagascar.jp

せっかくなのでお題をつけてみた。
人に薦めたいかどうかは別として、ようやくマダガスカル3を鑑賞。
いっちゃ悪いけど予告編に期待感がなかったのであんまり期待してなかった。
でも、どえらい作品だったわ。

ニューヨークのセントラルパーク動物園から脱走した4匹の動物たちは、
マダガスカルからアフリカへと到達した旅の中で、なおニューヨークへの帰路を模索していた。
モンテカルロで起こした賭場荒らしにより動物保護局に追われる彼らは、
移動サーカス団の列車に逃げ込むことになる。
そこで、彼らはニューヨークに帰るには、このサーカス団を買い取り、一旗あげることが近道だと気づく。
アレックスは、自分をアメリカンサーカスのプロモーターと偽り、
マンネリで士気の低いサーカス団を、一流に仕立て上げていくのだった……

みたいなはなし。


もうそろそろ時効だろうからいうけど、
僕は動物園の勉強をしていたことがあった。
あちこちの動物園にいった。いろんな動物をみたし、いろんな動物の展示方法を見た。
でも、動物園って、おかしな施設で、
いったいだれがどういう目的で作ったり運営したりしているのか、なんだか良くわからないうちに、
ひっそりと人間の生活に入り込んでいるものなのだ。
だから、動物園ってほんとに必要なの? 何が面白いの? との問いに、
ずっとさらされ続ける施設でもある。

動物園ができてから150年間、彼らはたった一つだけの武器で、
ずっとその問いに答え続けてきたのだーー『動物を飼育する』ことによって。

僕がこのマダガスカルの1作目を見たのは、この問いにさらされることに疲れてきた頃だった。
動物園の世界から逃げ出して野生を目指す彼らの物語は、何となく苦い味がした。
とはいっても、彼らを忘れることもできず、
2作目が公開されたときには、越谷レイクタウンまでアラケイに会いにいったりもした。
そうして、3作目。
僕は、動物園の前にたたずむ彼らを見て、少しだけ泣いてしまった。


まあそれはともかくとして
基本的に、全編スラップスティックのジェットコースターギャグアニメなので、
細かい違和感につっこむよりも早く、次の無茶を通してくる展開が続く。
最初はスピード感についていけないけれども、15分くらい見ていると、それになれてきて、
彼らがどんなことをしでかしても楽しい気持ちになりはじめる。
そうしてるうちに、だんだん世界観の輪郭がはっきりしてきて、
いつの間にか観衆は、サーカスでの動物ファンタジー的な戦いの舞台にたたされている。


この、
『動物たちがよってたかって嘘をつきまくるけど、本当に大事なことには絶対に嘘をつかない』
というマダガスカルの手法でこそ、
CGで描かれた動物たちにしか語ることのできない、動物たちの真実が鮮明になるのだ。
光と音が幻想的に飛び交い、不可能に思える所業が次々と達成されていく……
そんな動物だけのサーカスのシーンは、まさに魔法という言葉がふさわしい。
美女と王子が、愛に包まれ雲の中で踊っているかのような、そんな幻想。
ああ、ディズニーが魔法と呼んでいるものはこういうものだったかもしれないと、思い出した。
マダガスカルとは、そんな伝統ある由緒正しい魔法を使った、動物たちのお話だったのだ。


そんな感じで、楽しい気持ちに疑問を感じる間もなく、あっという間に終わってしまう映画なので、
見終わったあとの気分がとても良い作品になっている。
映画の評価が、全般的に文句なしの高得点になりやすいのも、そういう所からだと思う。


1800円で見る価値があるかどうかについては
マダガスカルを1、2と見てる人は1500円。
サーカスを運営するシーンがよかったので+300円。
(特にアレックスの演説が良かった。サーカスに人間はいらない!)
そして彼らのサーカスが見せてくれた、動物たちのサーカスの向こう側に+300円。
の2100円としておこう。
でも、彼らが最後に見せてくれた、『動物園としての物語』。
感動で泣いておいてなんだけど、僕は一瞬でも動物園に人生を預けたことのある人間としては、不満があって。
自分が、動物園が実は好きだったんだということに、否応なく気づかされてしまった感があった。
そのことに、さらに300円を払いたい。


ちなみに、蛇足だけど。
『動物が嘘をつきまくるけど、本当に大事なことには嘘をつかない』っていうところだけど。
つい最近、全く正反対のアプローチで描かれたある動物映画を見て、僕は、ちょっと悲しかったから、
このマダガスカル3が、僕の動物物語への幻想をしっかりと体現してくれて、とてもうれしいのだ。