動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

2012年動物映画ランキング 2位 

戦火の馬

戦火の馬 ブルーレイ(2枚組) [Blu-ray]

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古来、動物映画といえば、いかにもお金がかかってなさそうなセットで
なんか演技なのか、素なのかわからない動物が出てきて
それがまあまあかわいくてなんだかよかったね、
みたいな話が多かったのはまあ否定しようがなくて、
訓練された動物映画ファンはそんな風景を標準と思いこんで、
そこに示された憧憬から、考古学的に真実をつかみとろうとするのに慣れている。
だから、むちゃくちゃきれいで、むちゃくちゃ金かかってて、
キラキラした動物が出てくる動物映画は、はっきりいって、存在を信じようとしないのだ。
まして、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督作品である。
そうなると、それはすでに神話である。


神話の動物たちが、21世紀に蘇るとき、僕たちは恐れ立ちすくむのだ。
この戦火の馬の主人公ジョーイは、神話の馬だ。
人間が馬に期待する力強さ、やさしさ、躍動を、
スクリーンの中で遺憾なく発揮するジョーイは、完全な美を備えていた。
戦火の馬はそういう映画だ。


だから、この映画に戦争とヒューマンドラマ的な大作を期待してしまった人たちは、
実に3時間も馬が放浪するさまを眺めながら、一体何がおこっているのかと、
ドキドキしてたかもしれない。
でも、戦車を軽々しく飛び越えていくジョーイをみたら、
そんなことはどうでもよくなったんじゃないかな。


イギリスに生きる動物たちは、どれもクレイジーだ。
もう、川辺でたのしくパンの草笛を聞いている時代じゃない、と、
西部戦線の泥だらけの塹壕の中から、神話の馬が語りかけている。