動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

シーズンズ 2万年の地球旅行

毎年恒例、動物ドキュメンタリーシリーズ。

「動物のこんな映像とれました」みたいないわゆる動物ドキュメンタリーは

毎年あって、その中でも、なんかこのイギリス系とかアメリカ系とか、

大作が一本くらい公開されるというのが動物映画界の常となっている気がする。

またこんなの? と思うかもしれないけど、

録画環境は日進月歩してるし(4K!!  8K!!)、

 

撮影場所もテーマも千差万別、

しっかり時間をかけたりしないと撮影できない瞬間もあるので、

いつもなにがしかは新しさがある内容となっている。

というわけで、シーズンズを見てきた。

どうでもいいけど、「動物ドキュメンタリー」っていったときに、

「○○みたいなやつですよね?」っていう、○○の内容が人によって違うのは楽しいよね。

 

gaga.ne.jp

 

21世紀の映像美

動物ドキュメンタリーをどのシーンからはじめるかというのは興味深い着眼点で、

僕たちが、「どのような世界に入っていけばいいのか?」ということを教えてくれる。

シーズンズの第一印象は、静かな映画だという印象だ。

季節は冬、特に印象的な音楽も、必要以上の語りもなく、

淡々と動物と自然の美を映していく感じ。

動物も、希少性のある映像というよりは、みんなが見たいものを追いかけてくれている。

クマ、オオカミ、ウマ、イノシシ、鳥たち。

特徴的なのは、比較的どの動物たちも「戦い」のシーンが多く、

冗長になりがちな風景に過度に生き生きとしたリズムをつけていた。

 

中でも特に、オオカミの狩りのシーンは見応えがある。

オオカミの走りを正面から舐め回す迫力のある映像、

追われるウマは巧みな走りでオオカミを翻弄し、

追いすがる群れの中には転倒する個体も……!?

ここで、ちょっと、あれ?ってなるんだけど。

こんなよくできたアングルの映像、どうやったらとれるのかと。

とかなんとか思っている間にも、動物を変えて次々とかっこいい映像が展開されていく。

その疑問が最高潮に達したときーーそれまで潜んでいた「人間たち」が、作中にはっきりと姿を表す。

そしてこのとき、誰しもこの映画が何をしようとしているかを「覚悟」できるのである。

「ああ、そういうことだったのか」とww

この場面、メッセージ系動物映画が大好物なコヨーテが大喜びしたのはいうまでもない。

 

季節のアイロニー

人間が出てきてからは、話が早い。

序盤で野生の限りを尽くしていた動物たちは、次々と家畜化されていき、

人間の住む風景と同化していく。

なるほど、ここまでくると、序盤の動物のセレクトも伏線だったことがはっきりしてくる。

シーズンズというタイトルから、僕は季節をテーマにした作品であると思っていた。

けれど、この映画の季節は、序盤からめまぐるしく移りかわっていき、

一つの季節を掘り下げるという、「よくある」動物映画ではなかった。

人間たちの物語の中で、「冬」の語りが強調されるという構造こそが、シーズンズの季節論である。

自然保護の観点ではよくある比喩ではあるけれども、

動物映画ではっきりここを中心としている作品は少ない。

最後にちょっとそのことを匂わせるタイプの映画はあっても、その中心的なテーマのために映画を構成した例は珍しいと思った。

中盤から人間が出てくるところ、後半で「歌」がはいるところなど、

前半と後半のギャップをつくるためのしかけになている。

好みが分かれる、という評価が多いのはここだろう。

 

季節の思い出

そんなわけで、一度テーマと構成を理解してしまえば、

そもそもの映像美も手伝って、あとはとても愉快に見られる映画ではある。

一番よかったのは、第一次世界大戦のシーンで、

戦場で多くの血が流れているのに、

生物たちは淡々とそれぞれの生を生きているという、

これまでどの動物映画でもみなかった映像になっていた。

そして、塹壕に流れ込むマスタードガスが、次の場面の殺虫剤との対比になっている。

場面ごとの印象を強調して相乗効果を引き出していく、

こういう細かいケアができる動物映画が増えてほしいと思います。

 

スコア

シーズンズを映画館で1800円払ってみる価値があるかというと、

まず、オオカミが過剰にでてくる動物ドキュメンタリーで1800円。

挿入歌がある動物映画は名作なので+200円。

説教の時間が長いので+100円。

の、2100円としておこう。