動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

ベル&セバスチャン

http://www.belleandsebastian.net


というわけでみてまいりました。
久しぶりの動物映画でございます。
あの人気動物アニメシリーズ、名犬ジョリィの原作の実写映画。


自分も世界の名犬シリーズを頑張って追っていた時期があり、
この名犬ジョリィシリーズにたどりついたわけだけど、
意外とこの名犬ジョリィ、知名度が高くてびっくりするというか、
逆に「なぜジョリィを知らないのか」みたいな話にすらなりがちという
なんか実感の割にすごい動物作品なわけですよ。
というわけで見てきました。


あらすじ

フランスとスイスの国境にそびえるアルプス山脈
セバスチャンは山遊びの途中、偶然にも一匹の牧羊犬と出会う。
彼は、牧畜を営む村人たちに恐れている「魔獣」だった。
魔獣が人間に捨てられた牧羊犬であることを知ったセバスチャンは、
彼と友達になろうと、山を駆け回る毎日を送る。
そんな最中、セバスチャンは、山の中で村人たちの秘密を目撃してしまい、
それをきっかけに、平和な少年の日常は、第二次世界大戦の悲しみに飲み込まれていく……

みたいなお話。
久々に動物映画のあらすじ書いたけど、結構うまくまとまりましたね。(自画自賛)
てか、途中まで、グレートピレニーズだからピレネーの話だと思い込んでいたcoyote少年なのでした。


なんつーか、名犬ジョリィの思い出というと、このブログでもはるか昔に触れたけど、
二人が投獄された時に、セバスチャンに「牢が壊せるかい?」とか言われて
速攻で牢屋を破壊して脱獄していた話の印象が強くて、
ジョリィ=動物界屈指のパワーキャラみたいなイメージなのだ。
この映画を観る時も、ジョリィがどんだけ強いか期待して劇場に行ったし、
村人による魔獣のプロモーションが非常にいい感じで、
どんだけすごいのが出てくるんだろうと思ったんですが、
これ多分ネタバレしても誰も文句言わないと思うけど、
普通にかわいい感じのグレートピレニーズが出てきて、
こんにちは人間さん、みたいなペット映画みたいな空気感になっちゃって
そこでもう結構笑ってしまった。
そして、それに続く銃声がして警戒するシーンとかで、魔獣っぽくうなり声をあげるんだけど、
それもなんか「言われたからやってます」みたいな、どこかあどけない感じで
掃除機が怖くて威嚇しちゃう犬みたいな絵になってた。


それ以降も全然セバスチャンを警戒してないし、
すぐ尻尾振りながら少年について行っちゃうので、
魔獣ったって、まあこいつには悪いことはできねーだろうな、みたいな物語上の意味を超えて、
単にかわいい動物をひたすらみせる映画みたいになってた。


そこがなんかうまく作用して、中盤からは少しムードが変わるんだけど、
ベルがかわいいとこだけは変わらないので、そこのギャップも割とおもしろい感じです。
この人は悲劇には絶対あわねえだろうなあ、みたいな、オーラがあった。
かわいいはほんと正義ですな。


セバスチャンは魔獣にベルっていう名前をつけていて、
ジョリィってなるのはアニメ版だけみたいなんですが、
このベルっていうのは劇中でも語られるけど「女の子」っていう意味なんですよね。
これってほら、あれですよ。
こんな場末の動物映画のレビューなんて見てる熱心な人には言わずもがなですが
名犬ラッシーと同じ発想ですね。
名犬ラッドもそんな感じですが、この辺のつながりも、名犬探求シリーズとしては興味深いですな。


映画としては、全体的に残念なところはほとんどなくて、
映像もいちいち綺麗だし、
動物映画には珍しくちゃんと人間を最後まで描くような物語があったし、
音楽も素晴らしい、
ベルはとにかく写ってる間は全てかわいい、みたいな
「名犬映画かくあるべし」というような魂を感じさせる高級路線動物映画でした。


お値段としては、名犬ジョリィを見たことがあるなら1500円。
ベルが常にかわいいので+300円。
あと、セバスチャンが地味に超絶美少年で、これもわりとかわいい(危ない…)ので+300円
ということで、2100円としておこう。
あ、あと「ベルの歌」で笑ったので+300円の2400円としておこう。
いや、いい歌でしたよ。
動物映画はこうでなきゃあ。


ちなみに、「狩人と犬、最後の旅」の監督だったみたいです。
狩人と犬は、僕が、こっちに来て初めて見た映画。
あれからずいぶんと時が経ったのだなあと。

小さな世界はワンダーランド

映画『小さな世界はワンダーランド|原題:TINY GIANTS』公式サイト - BBCアースが新たに描くドラマチック・ドキュメンタリー|2015.5.9(土)全国順次公開

もはや年中行事の感のある、春の動物ドキュメンタリー
各位、よろしくお願いします。

祭の馬

映画『祭の馬』公式サイト


『野馬追』を中心としたドキュメンタリー映画。
福島県では、競馬、野馬追い、また食肉用と、様々な目的で馬を飼育している。
あの震災で、人間が立ち入り制限となった20km圏内にも、まだ馬たちが生きていた。


あの災害を運良く生き残ることができた彼らだが、
まるで、生き残ってはいけなかったとでもいうかのように、
馬たちは災害行政の狭間にとらわれ、身動きができなくなってしまう。
その中で彼らを生き延びさせようとする人間たちを、
一匹の馬にフォーカスすることで語りつなげた作品。


……あの震災のとき、自分は、ネットで緊急配信されていた各局のニュースをながめながら、
『動物たちの災害が始まるとき』とは、みたいな事をぼんやり考えていた。
そんなことを考えられたのは、僕が運よく難を逃れたからできたことで、
そうでなかった人たちがいたことを知っている。


動物映画を趣味とし、動物と人間の幸せな未来を祈っている、なんていいつつ、
動物たちは、今、どうしているのだろう? 
これから、動物たちは、どうしていくのだろう? ということを、
しっかり見つめなければいけないと思いながらも、
結局、この映画のように、人に録画してもらったものでしか見ることができないのだから、
自分は動物の物語を語る資格がないといっても過言ではないのではないか。
その思いがずっとあって、少しづつ動物や動物の映画を語るのが億劫になってしまっていた。


でも、動物映画が好きだから、資格がなくたって、
動物映画を見てもいいんじゃないかと思って、なんとか見に行くことができた。


内容は上に書いたとおりで、
大事なことは、作中で余すことなく語られているので、
ぜひ見ていただきたいんだけど、
特に心に残ったのは2つ。


ひとつは、馬たちを「生き延びさせない理由」を、
当事者たちに語らせていたところ。
あの語り口には、日本でのウマと人間の距離感と、
距離感という言葉では語れない歴史と絆がつまっている。
動物を語るというのは、こういうことだと思う。


もうひとつは、ウマに焼印を押すシーン。
震災前と震災後というスケールを超えて、『過去』と『現在』の時空が、
まるで良質なファンタジー作品を見ているかのような説得力で、つながっていく。
動物を語るというのは、こういうことだとも思う。


祭の馬は、人が動物を語るということのすばらしさと怖さを改めて感じられる映画だった。
震災があって、いろいろなところで、人々の心が離ればなれになってしまった世界だけれど、
それだけのことでは、馬と人間の絆は消え去ることはないし、
それすらも、僕たちの歴史の1ページにすぎないのだ。
逆に、だからこそ、彼らを追いて、自分たちだけが元の世界へと「復興」していくことなどできないのだと
そんなことをつらつら考えることができた。


観賞後、運よく監督のトークショーに参加することができたので、
僕は『なぜ馬の映画を撮ったのか』それだけを聞きたくて、質問をしようかと思っていたのだけれど、
監督は、そのことも含めて、動物の映画を撮ることの功罪みたいなのをしっかりと語ってくれて、
変な言い草だけど、『あの人が動物の映画を取ってくれて本当によかった』と思った。
これこそ、正真正銘の動物の物語だ。


2013年動物映画ランキング第2位。


物語 4 (物語があった)
キャラクター 4 (出てくる人間に魅力があった)
動物  5 (動物が描かれていた)
ファンタジー 4 (隠し切れないウマと人間への思い)
総合 4 (忘れえぬ名作)

お値段 2500円

2013動物映画ランキング出張編

震災があって、自分がそのとき何をしていたのか、何を思っていたのか、
もう一度見つめ直そうとして、
ようやく、この映画を見たことを誰かに話すのを忘れていたということを、思い出すことができた。
元通り、ここに記すことができることを、少しだけ喜ばしく思います。