The Plague Dogs
この物語には、あまり良くない記憶がこびりついている。
今では本当に後悔しているのだが、
あるとき僕は、ついうっかり、この疫病犬のDVDの話を、人に漏らしてしまった。
その時、この物語にかけられた言葉は、思い出したくもない。
ただ、僕はその時かけられた言葉に、衝撃と当惑と恥ずかしさを覚えたことだけは、生々しく覚えている。
ある散歩道で、感じのいい犬と出くわしたときのように、
その人とこの物語も、人生の散歩道で偶然出くわしていれば、
少し口笛など吹いてみて、にこやかに視線を交わすことなどもあったのかもしれない。
あの時、僕が、あまりにも無神経に、この物語の話をしてしまったことで、
ひとりの人間と、一匹の物語の出会いを、つぶしてしまった。
見てくださいとも、見ないでくださいともいえず、
ただ一言「そんなつもりじゃないです」と搾り出した僕は、
それ以来、自分の『ちょっと好きなあの話』をするのをやめた。
僕のせいで、輝きを失ってしまう物語など、あってはいけない。
でも、僕はこのDVDを手に入れることができたのが本当に嬉しかったから、
また、書いてしまった。
でも、もう二度とその話は、しない。