動物映画の面白いところって、
というか動物の話の面白いところなんだけど、
その一つに、『主題の動物の種類』で癖が出てしまうところだと思う。
これは、ほとんどの場合絶対意識してそうなってるわけではないと思うけど、
犬は犬の、猫は猫の、ネズミはネズミ特有の世界になっていく。
僕はこれを、動物が、人間と関わりあってきた歴史そのものだと思っている。
パリ猫ディノの夜も、かなり独特の作風で、どうなるかな? って思って最初は見ていたけど、
安心できるくらい、典型的なネコの物語だった。
ディノはパリの街にすむ猫。
昼間は警官のジャンヌと娘のゾエの飼い猫だが、
彼は夜な夜な、ゾエに『おやすみ』を言ったあと、パリの若い泥棒の家に遊びに行くのだ。
一人と一匹の夜の散歩は、いつしか街のギャングとジャンヌとゾエを巻き込み、
大掛かりな抗争に発展してしまう……
っていう話でいいかな?
頭が悪いので難しい話はできないんだ。
ドッグポリス純白の絆でもいったけど、動物に警察が絡むと急に難しくなるねえ
いっても正直、お話に目新しさとかはあんまりなくて、
最後の攻防とかもディズニーがちらついちゃったりして、
そこはあんまり褒められないけど、
絵の雰囲気はすごく良かったんだよね。
なんか全体的に、世界は鋭角的に描かれててアートな感じなんだけど、
人間はなんかなめらかに描かれている。
なめらかっていうのとも違って、なんか紙人形みたいなんだよね。
それが、紙みたいにふわりふわりと動くもんだから、
鋭角的なパリの夜景にあいまって、幻想的な世界を作り出す。
それに見入ってしまう感じ。
で、件のディノ先生がどうかって言うとさ、
これがすごくて、
ほんっとに1から10までネコの動きなのね。
すごくリアルで、ネコの暖かさと空気感をこれでもかというくらい描いてる。
これですよ。
世界はアート、人間は空にまう花びらみたいなのに、
ネコだけがリアルなんですよ。
このバランス感の無さこそが、ネコの物語そのものだと僕は思っている。
「パリ猫ディノの夜」は、非常に実験的で芸術的な作品だ。
だけど、ネコを描くことからは逃れられなかった。
自由になれなかった。
そして、あんなふうにネコを描ききったことが絶対に正しいと思っている。
いつもの、ネコの物語の哲学ですよね。
そんなネコの映画を見て、
うちのネコも、夜中にふらふらと出て行ったもんだけど、
あの時なにしてたのかなあとか、
今でも元気にしてるかなあ、みたいなことを思いましたとさ。
まとめ: アートっぽい体だけど猫物語の正統後継者
物語 3
キャラクター 3
動物 4
ファンタジー 3
総合 3 (ネコ好きは期待を裏切られない)
お値段は1900円としておこう。