動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

2012年動物映画ランキング

もう2月になってしまったが、
何事も遅すぎることはないと思い感想など書いてみる。
1月に書こうと思ったが、あまりにも見逃した映画が多すぎて、
ちょっとショックだったんだ。


去年、僕は動物映画ランキングの総評で、
「動物映画に出会える体質」が、自分の誇りだと書いたけど、
去年は、あんまり出会えなかった。
それは、ちょっと慢心があって、動物映画が怖いなと思っていた時期があったからだ。
出会おうとしない人は出会えない。
そのことを思い知った1月だった。


今年は、ちゃんと会いにいくよ。
俺より強い動物映画に会いにいく!!

2012年動物映画ランキング 1位

おおかみこどもの雨と雪

おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

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動物映画を見始めてから、結構いろんな映画を見てきた。
面白いものも面白くないものもあった。


というか、
動物映画の70%くらいは、人間たちが期待をかけているほど面白くなってない。
でも、動物を映す、物語るということに対する人間の姿勢が、
面白さとは別のところで見てる人に作用するから、
『まあ悪くはなかった。動物映画だし』
という感想になる。
だから、今まで見てきて、そこはもっと頑張れよ! と思うことこそあれ、
だいたいどれも、「それなりに愛せる」内容の映画ばかりだった。


ところが、ずいぶんと久しぶりに、
好きとか、嫌いとか、いいたくなるような動物映画に出会った気がする。
おおかみこどもは、僕にとってそんな特別な作品だ。
はっきりいって、映画内で語られてることはあんまり好きじゃない。
この作品の芸術としてのよしあしは、
もういろんな人が言い尽くしてると思うので、あまり長くは書かないけど、
僕の好きなファンタジーや動物の物語は、
「ファンタジーであること」や、「動物であること」を、
絶対「言い訳」にしたりなんてしなかった。
そこが、僕の考える、おおかみこどものとても嫌いなところだ。


でもね、こういう、
きらいなんだ! いやなんだよお!
って叫びたくなるのって、実ははじめてじゃないんだよね。


昔、僕がオオカミという動物がとても好きで、
オオカミが思想の中心だったときは、
いろんなオオカミの作品に、「なんかちがうよお!」って叫んでたな、
ってことを思い出してしまったんだ。
オオカミがこんなに好きだったことを、誰かに言われて思い出さないといけないほど、
忘れてしまっているっていうこと。
たぶん、そのことが怖くて、僕はこの映画を嫌いっていいたかったところもある。
「いろいろ、しかたないよね」で終わらせられない、
見てる人に、「しかたない」で終わらせてたまるかと思わせるところが、
このおおかみこどもという作品の功罪でありすばらしさだと思う。


そういえば劇場でこの映画を見てる間、
僕はわりとずっと「遠い気持ち」になっていて、
『この地にもオオカミたちが戻ってきたか、そうでなくてはなあ』
なんてしんみり思っていたんだけど。
けど、そうじゃないよね。
人ごとじゃないはずだろ。
なんだかんだ、この作品見て一番喜んでんのは、僕らだろ。
なあ、20世紀のおおかみこどもたちよ。


2012年は、何回目かのオオカミ元年だった。
この作品には、世界を変える力がある。
この作品を見てオオカミという動物に惹かれた人たち、
オオカミという動物を思い出した人たちが、
オオカミのエネルギーと言葉を借りて、
動物、自然、地球、そして人間を守ろうとする知識と知恵、技術を身につけていくのだ。
動物映画って、そういうものなんだよね。

追記

DVDがリリースされたので、もう一回この作品を見た。
それで、今まで気持ち悪かったことが、すべて解消した。
この映画のいいところと許せないところは、
全部入りの国産スマートフォンの関係に似ている。
この映画には、みんなが欲しかったものが全部入っている。
ワンセグも、赤外線も、LTEも、キャリア専用アプリも、
全部入っている。


でも、それを入れるために、そのハード自体の本当の性能が、
スポイルされているのだ。
僕がこの作品に望んでいたのは、
というか、すべてのオオカミを語る人が背負う運命は、
ワンセグでも、赤外線でも、田舎の優しさでも、森のファンタジーでもない。
オオカミだ。
オオカミというブランド、つまり思想だ。


その、ブランドらしい作りをなくしてまで、全部入りの携帯を作ったこと。
それ自体は悪いことではなくて、
皆に受け入れられる物語になり、21世紀のおおかみこどもを生む結果となった。
でも、本当に欲しかったのは、オオカミという動物に正面から向かい合う人間像だった。


だから、この物語は、動物映画の入門として、誰にでも自信を持って進められる。
僕がこの映画を見た時、これは嫌いだけど素晴らしいと思ったのは、そういうことだったんだ。
この映画に疑問を持つとき、おおかみこどもたちの「違う歌」がはじまるのだ。

2012年動物映画ランキング 2位 

戦火の馬

戦火の馬 ブルーレイ(2枚組) [Blu-ray]

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古来、動物映画といえば、いかにもお金がかかってなさそうなセットで
なんか演技なのか、素なのかわからない動物が出てきて
それがまあまあかわいくてなんだかよかったね、
みたいな話が多かったのはまあ否定しようがなくて、
訓練された動物映画ファンはそんな風景を標準と思いこんで、
そこに示された憧憬から、考古学的に真実をつかみとろうとするのに慣れている。
だから、むちゃくちゃきれいで、むちゃくちゃ金かかってて、
キラキラした動物が出てくる動物映画は、はっきりいって、存在を信じようとしないのだ。
まして、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督作品である。
そうなると、それはすでに神話である。


神話の動物たちが、21世紀に蘇るとき、僕たちは恐れ立ちすくむのだ。
この戦火の馬の主人公ジョーイは、神話の馬だ。
人間が馬に期待する力強さ、やさしさ、躍動を、
スクリーンの中で遺憾なく発揮するジョーイは、完全な美を備えていた。
戦火の馬はそういう映画だ。


だから、この映画に戦争とヒューマンドラマ的な大作を期待してしまった人たちは、
実に3時間も馬が放浪するさまを眺めながら、一体何がおこっているのかと、
ドキドキしてたかもしれない。
でも、戦車を軽々しく飛び越えていくジョーイをみたら、
そんなことはどうでもよくなったんじゃないかな。


イギリスに生きる動物たちは、どれもクレイジーだ。
もう、川辺でたのしくパンの草笛を聞いている時代じゃない、と、
西部戦線の泥だらけの塹壕の中から、神話の馬が語りかけている。

2012年動物映画ランキング 3位 

よるのとばりの物語

夜のとばりの物語 [DVD]

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物語やファンタジーと、動物は非常に近い関係にある。
近いというか、動物たちは、ファンタジーに住んでいる。
現実と、ファンタジーを行き来するものたちだ。
ただ、彼らは「ファンタジーそのもの」ではない。
彼らだって、気が向かないときには、ファンタジーを「してくれない」。
そんな気まぐれな動物たちと、ファンタジーの世界で仲良く踊るためのコツを、
物語の形で教えてくれる。
よるのとばりの物語は、そんなことを考えさせてくれる映画だった。


夜毎紡がれる6つの物語は、どれも隅々まで動物が重要な役割を果たしている。
彼らは、さも当然のように、その世界に住んでいるのだ。


なんというかこの映画は、いわゆるいい映画のような気がしたので、
ぼくは自信を持って知人を誘った。
『心配しなくても今回は動物映画じゃないです。
 キリクと魔女アズールとアスマールも純粋に面白かったし』
そんなこんなで、意気揚々とファンタジーの扉を開いた僕たちの前に、
オオカミが立っていた。
オオカミは口を開いた。


『やあ (´・ω・`)
ようこそ、夜、語られる物語へ。
このオオカミ男のラブストーリーはサービスだから、まず見て落ち着いてほしい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「動物映画アラート」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、そう思って
この映画を公開したんだ。


じゃあ、注文を聞こうか。 』


ぼくは言った。
「しゃべる馬よりめずらしい馬の話をください」


そんな動物映画だった。