動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

やっぱり動物映画が好き

動物世相-あるいは、SING/シングネクストステージの感想

犬の性格は犬種に関係ないというニュースが目に入った。

「従順さなどの犬の性格の違いのうち、犬種の違いで説明できるのは全体の9%程度」という分析で、じゃあ9%の違いってなんなんだろうと気になりました。

牧羊犬かどうかみたいな部分だったりするんでしょうか。

 

www.yomiuri.co.jp

 

で、本題なんですが。

先日、シング2……もとい『SING/シングネクストステージ』を見たのだけれど。

その時の感想は、ほぼ1作目のSINGを見たときと同じで、「複雑さを求められない楽しくかわいい動物映画」という感想だった。

でも、1作めの2018年の公開からもう5年経つわけで、冷静に振り返ってみるに、当時の自分は、その『複雑であるかどうか』を動物映画の最優先の尺度としていたのだと思う。

つまり、「複雑でない動物の映画は、あまりクオリティが高くない」という観点で、自分は動物映画評を書いていた。

もちろん、その視座にたっている理由はあって、それは動物と人間の関係の学問が発達してきたことが影響している。

動物映画は、そもそも昔から「かわいい犬が出ていれば(中身がなくても)それで売れると思っている」みたいな批評がつきものだった。

それに、例えかわいくない動物であっても、「エキゾチックな珍しい動物」についてはそれ1匹で映画が1本十分に撮れる、みたいな性質もあった。

これは、すごく雑に言うと科学の発達=人間の行動範囲の拡大=地球の探索の深化=新生物の発見みたいな歴史があったからだと理解している。

(そもそも動物園というのが、歴史上そういう観点から発達してきたからだ)

そういう類いのことを、僕は端的に「複雑ではない動物映画」と評していたのだと思う。

 

でも、20世紀も終わりに近づくと社会構造の変化や、環境破壊、野生動物の絶滅、保護、といったテーマに加えて、人間が動物とどう関わっていくべきか、という、科学でもあり、哲学でもあり、さりとて宗教でもあるテーマを動物映画が持つようになり、それは『複雑な構造』を描き出しがちだった。

だから、『複雑さ』を持っている動物映画は、動物を物語ることについて何らかの決意がある、という点で、自分は高く評価していたというわけなのです。

で、最初に戻って。

シングはそういう映画ではなかった、という話なんだけど。

2022年になって新しくなったシングを見たとき、すごい衝撃があった。

衝撃というか、恐怖に近い感情だったかもしれない。

それは、自分の中に旧時代の偏見みたいなものを発見してしまったときの恐怖ーー

つまり、「動物に動物らしい振る舞いをさせようとしているのは、歴史の尊重ではなくて、偏見の再生産なんじゃないのか?」ということの発見だった。

 

動物らしさとはなんだ?

その動物をチョイスしたときに語られねばならないものとはなんだ?

それは、彼らが望んだことなのか?

それをなぞらせることが、動物の物語の役目なのか?

これこそがまさしく、「動物ポリコレ」以外の何物でもなかろう。

 

映画シングの登場人物たちは、誰も彼も、もう動物であることを押し着せられることに飽き飽きしているように見えた。

だから、彼らは「本当の自分をさらけ出せる場所」として、エンターテイメントの舞台を選んだ。

2作目になって、一廉の成功を収めた彼らであっても、その本質的な衝動と悩みは変わっていないようだった。

そんな等身大の生き方を、「コアラらしくない」「ハリネズミらしくない」と指摘することに何の意味があるのだろう?

彼らはそれを嫌うから、歌と踊りを磨いたのだろうに。

 

小説、映画、アニメ、TwitterYouTubeメタバース……。

動物たちは人間の文明の発達とともに、自己表現の場所を拡大してきた。

人間と同じツールを使って、動物たちは自分たちの言葉を発することができるようになったのが21世紀の今だ。

そんな彼らの言葉を、人間のためではなく、自分たちのために使うーー動物が動物らしく振る舞わなくていいために使うことの、何が悪い、と。

シングは、最初から、昔っからそういう映画だったのかもしれない。

 

犬の性格の新事実に関するニュースを見て、そんなことを思い出した。

自分も、犬の物語を語るとき、犬が犬らしくあるということにこだわりすぎていたかもしれないな、と。

 

……だとしても、という話で。

結局、コヨーテは、犬の物語が好きだ。

結局、『自分たちが【人間たちに求められる存在であること】の証明を、何よりも求めているのが、犬という生き物なのではないか』という幻想を捨てずにはいられないのである。

だから、居場所を見つけた犬たちを見ると、それが現実であろうと虚構であろうと、幸せな気持ちになるのでです。

 

sing-movie.jp

1作目の感想

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