動物映画D20

動物映画をたんたんと見続けるコヨーテなのでした。 

動物映画_ざんねんないきもの事典

映画ざんねんないきもの事典を見てきた。

なんというかこういう映画は、自分レベルで動物映画なら何でも見るマニアでも一瞬ひるんでしまうんだけど、やる気を出して見に行った。

なんでやる気を出さないといけないのかというと、予告編とか紹介記事とか、事前情報を一切見ずに小学生が公民館で見る映画みたいな偏見があり)

そして、久しぶりに良質の動物映画を色んな角度から見て、やっぱり動物映画やめられんなと思ったというお話です。

 

「ざんねんさ」とはなにか

ざんねんないきもの事典がどういうコンテンツかはあまり知らないのでそもそも論とかは書けないんだけど、そのテーマである「ざんねんさ」とは何かという話で、この「ざんねんないきもの」という挑発的な言い方が気に入らなくてこのシリーズを敬遠している人もいるということは知ってる。

その「ざんねんさ」については、映画の冒頭でも説明があったような気がするが、全体の描き方からすると、「生物の食性選択や生活や繁殖上の戦略で、特に制限要素に着目したある動物のトリビアで、聞いた人が驚きを持てるような情報」という感じの定義がふさわしいのではないかと思う。

なので、そこには独善性だったりネガティブな気持ちというのはないんだけど、「へ〜そうだったんだ」というよりは、「それは大変そうですね……」という共感を強調して語られるという点が若干目新しく、現代にふさわしい動物コンテンツだなあと感じた。

とかなんとか線引きをしておきながら、映画を見ていると自分も「うわ、それはざんねんだな」と素直に思わされてしまうようなストーリーテリングの巧みさはあったりして、あなどれない映画です。

 

3つのざんねんないきものの物語

映画は3本の物語のオムニバスになっている。

それぞれ主人公となる動物、描き方のテイストが違っていて、気持ちよく最後までみることができた。

「リロイのホームツリー」は、オーストラリアのコアラがテーマ。

子どものコアラ「リロイ」が成熟して独り立ちをするに当たり、自分だけの木である「ホームツリー」を見つける旅に出る。

しかしそこは所詮コアラ、ユーカリに好き嫌いがあったり、コアラ自体に戦闘能力がなかったりして、旅は苦難の連続に。

そんな旅を宿命付けられている種族である「ざんねんさ」をリロイは嘆く。

しかし、その度で彼は祖霊に出会い、コアラのざんねんさのルーツを知ることになる……。

という、お話。

これが、非常にスタンダードな動物物語で、「安住の地を求めるたび」「自分のルーツを探る」というこの王道展開を次々と踏んでいく感じがたまらなかった。

と、特筆すべきこととしてハリモグラがかわいい。名前は忘れた。

(ECHIDNAってハリモグラのことだったんだね)

 

「ぺん旅」はコミカルな内容。

3人の腐れ縁っぽいペンギンたち(ジェンツー、アデリー、あと一匹は何だっけ……)が穴場の漁場に行くさなか、迷子のコウテイペンギンと出会い、営巣地に返すための長い旅に出るという話。

ポジティブで愉快な身の上話の中に、自虐的にざんねんさが語られるという4人のペンギンたちのトークは非常に軽妙で現代的で、ずっと見ていたいという気持ちにさせられる。

たぶん、動物映画に興味ない人ならこれが一番おもしろく見られるんじゃないかと思います。

3匹が旅をしてコウテイペンギンに出会うのって遊戯王のふわんだりぃずみたいだし。

 

「はちあわせの森」は、日本の里山的な風景におけるニホンノウサギのウサオが家族の元を離れて一人で生きていこうとする話。

リアルさと愛らしさの8:2くらいのところをついてくる、ケモナーの階段でいう上級者向けみたいなありそうでなかったタッチ(褒め言葉)で動く動物たちは、ぜひ映像で見てほしいところ。

初めての自由な森の中でウサオがさまざまな日本の動物と出会い、危険を避けることを覚えていくという物語は、特に非捕食者の動物を主人公とする物語の王道の筋書きではあるが、それぞれの動物たちが「関連性を持たない」ように描くというところが、衝撃的に面白い。

中でも特に、自らの出自に悩むツキノワグマの月子(沢城みゆき)の物語には丁寧に時間が掛けられ、いかにも重要な人物としてウサオの物語と平行して展開されてゆく。

その2者が最後に出会うシーン、これこそが「はちあわせの森」のテーマを頑なに貫く、素晴らしい出会いとして印象に残っている。

ウサギの物語と聞くと動物物語の民は軽く身構えちゃうと思うけど、先達に負けないくらい良い作品でした。

 

まとめ

動物映画を見た記録として簡単に感想をまとめようと思ったけど、言いたいことが山ほどあって気持ち悪いくらい長くなった。

でも、これが良質の動物映画たる所以であって、良質の動物の物語を目にすると人は言葉を尽くさずにはいられないのである。

 

良質の動物映画 + 1900円

ハリモグラがかわいい + 100円

王道展開 +200円

ウサギの物語 +100円

ふわんだりぃずっぽい +100円

 

2400円としておこう。

しかしこの友人のブログからパクった金額表記のレビュー、長年の時を経てチケット料金が値上がりしていくさまを感じざるを得ないよね。

動物映画のクオリティが上がっているのに比例していると思うことにしよう。

 

zannen-movie.com